※本記事は、新城WORKのクラウドファンディングにご支援いただいた二河等さんのインタビュー記事です。

 

自分が大きく変わるキッカケとなったmindmap®︎との出会い

―――まず、今やられていることを教えてください。

二河「本業では、訪問型の病児保育をはじめとした、親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する事業を運営している、認定NPO法人フローレンスという団体で、今は人事として採用と社内のスタッフの育成をしています。複業では、【あたま】【からだ】【しくみ】の3つの軸で事業を展開している、hug-luma(以下ハグルマ)という団体を2017年の6月に立ち上げました。社会人の経験でいうと、新卒から13年半はシステムエンジニアとして働いていて、その後3年ちょっと人事をやっています」

―――ハグルマでは【あたま】【からだ】【しくみ】それぞれでどういったことをされているのでしょうか。

「【あたま】は、mindmap®︎という思考の整理アイデア・発想のツールを伝える、教えるのがメインです。mindmap®︎の用途は、例えば仕事であれば、お客さんとの商談内容や会議で話されたことを可視化・まとめたり、仕事ではない場面では、自分のやりたいことや理想像を叶えるために、自分の思考やもやもやを書き出して、整理したりすることができます。自分はどちらかというと、後者の自分のやりたいことを実現することを支援することが多いですね。

【からだ】は、インストラクターとして、運動・フィットネスの楽しさを教えています。実は、もともとハグルマは【からだ】の軸からスタートしたんですが、ランニングが趣味で、観光地に行って、ランニングをしながらご当地の美味しいものを食べて走る『ジョイラン』というのを、ランニングガイドとしてやっていました。そこからインストラクターに誘われて、という感じですね。

【しくみ】は、自分がシステムエンジニアとして培ってきた業務改善や、新しい仕組みの導入を支援しています。もっと大きな企業もそういったサービスを提供していると思うんですが、金額の面でなかなか着手できず、仕方なくアナログになってしまっている会社や個人の方って結構いらっしゃるので、そういった方々を支援をしています」

―――すべて何かをやりたい人の支援というところで共通していますね。

「そうですね、ハグルマでは、キャッチコピーとして『できるのひらめきをあなたに。』を掲げています。個人や組織にやりたいことや実現したいことのハグルマがあって、そこの間に自分が入ることによって、全部が回りだしてほしいという想いから、この名前をつけました。

ハグルマで自分がやっていることって、私より先駆者というかプロフェッショナルがいて、その方たちからすると私はひよっこだと思います。でも、ひよっこでも相手によっては十分な価値を提供できることもあるので、自分が最初のキッカケになればいいなと。そのキッカケを『ひらめき』と表現しています」

―――ご自身にもそういった小さなきっかけから変わったことがあったのでしょうか。

「自分は、mindmap®︎で大きく変わったと思っています。社会人3年目のときに、上司からこれで議事録とってみてって渡された本とソフトウェアが、mindmap®︎だったんです。それまでの自分は、発言しないで議事録をとる係を率先してやるような人だったんですよ。でもmindmap®︎を学んで、発言を整理・確認するファシリテーションが楽しくなって、積極的に指揮をとったり、一石を投じて議論を活性化したりするようになりました。自分がいかに今まで考えていなかったかというところに気づき、考えたりアイデアを妄想してやってみたりする楽しさに気付くことができました。

加えて、mindmap®︎を使うことによって、自分が今思っていることや将来やりたいことを可視化し、行動力もつけることができて、周りからも変わったねと言われるようになったんです。その後に、インストラクターの資格も取得し、今ではmindmap®︎を伝えていくことが仕事になりました」

 

サービスのユーザーから提供者へ。背景にある感動した体験

―――本業の話をお伺いしたいのですが、フローレンスへ転職したきっかけを教えてください。

「前職で9年間働き、フローレンスでは今7年目なんですけど、前職のときはシステムエンジニアの中でもサービスのユーザーから距離があるところでの仕事が多く、自分の仕事が社会でどのように役に立っているかが見えにくい部分がありました。なので、もう少し直接的な価値に触れられる仕事をしたいと思い、転職を考え始めました」

―――他にも選択肢が色々あると思うんですが、その中でもフローレンスにしたのはどういった理由だったんですか?

「フローレンスともう一社から内定をもらっていて、正直額面でいうとフローレンスの方が低かったんです。それでもフローレンスを選んだのは、自分がフローレンスの病児保育サービスを使って、感動したからですね。これだけ人の心に訴えられる事業に関わることは、将来的に自分自身の価値にもなるし、支援したいっていう気持ちが強くなりました」

―――心に訴えかけられるというのは、具体的にどのような経験だったのでしょうか。

「病児保育サービスのいち利用者として、初めて病児保育を利用したときのことです。発熱した子どもを自宅で引き継ぎ、預けて仕事から帰ってきて引き継ぐ際に、そのとき受け取ったA4の報告書に一日の様子がびっちり書かれていて、文量だけでなく、内容があたたかくて、感動して泣いたんです。これなら、本当に安心して預けられて、心配しなくていいし、自分やパートナーが本当に自分のため・家族のため・社会のために全力を尽くせる、そう感じました。

そのときに、自分がこれからもシステムエンジニアして働いていくとしたら、社会的意義のある事業を継続させて、発展させるところに、自分の時間やスキルを使っていきたいと思って。そのタイミングで偶然、パートナーがフローレンスのシステム担当の求人を見つけて、面接に行って、内定をいただくことができました」

―――他にも理由があれば、教えてください。

「あとは、転職のときの軸としていた、自分のやりたいことを実現できる、家族が笑顔でいられること、というふたつの条件を満たしていたからです。やりたいことというのは、先程お話したハグルマでの仕事ですね。『家族と笑顔でいられる』というのは、子どもができる前から、パートナーと家族みんなで過ごしたい、子どもはしっかりふたりで見ていきたい、パートナーもちゃんと社会復帰したいと言う話としていました。その2点を叶えるためには、時間にある程度自由度があるということが条件になっていたので、フローレンスに決めました」

―――最初はフローレンスにはシステムエンジニアとして入社して、人事に異動というのはなかなかなないキャリアだなという印象なのですが、どういう経緯があったんですか?

「ハグルマの【あたま】の軸でやっている、働き甲斐と働きやすさを高めていくということにもっと力を入れていきたいと思っていたので、それを組織でやってみたいなと。ハグルマで向き合っている人はどちらかというと、もうすでに特定のことに対して課題感を強く持っている人の方が多かったのですが、企業ですと本当にさまざまな方がいらっしゃいます。

実際に企業に雇用されて事業にコミットしている人たちへ伝えることは、今まで向き合ってきた人とはやりたいことや考え方も異なると思うので、自分もそれを学びつつ、彼らに何か良いきっかけを与えていきたいと思い、人事に異動しました」

―――実際に人事をやられていて、いかがですか?

「人事って一般的に難しいと言われる領域だと思うんですが、やっぱりそうだなと感じるところもありました。特に採用業務は最初から勝手も分からず、試行錯誤の毎日で…。とはいえ、全てのことに100点満点の正解はないし、やってみてからわかるものもたくさんあるだろうと思い、まずはやってみる、ということを取り組んでいきました。

今でも分からないことはありますが、エビデンスに基づいて仮説を立てられたり、分析し次の行動に生かすことができるようになったり、これまでに比べてワンランク上がった感じはします。最初は正直つらかったんですが、だからこそこれを超えた先に見えるものって、すごく輝いているんじゃないかなと思っています」

 

当事者として課題を考え、本業と複業で解決をしていく

―――色々なことにトライしてきている印象を受けるのですが、もともと色々なことをやることが好きだったんですか?

「そうですね。ただ、ハグルマをちゃんと始める前までは、何に対しても『なんとなくやってみる』くらいの気持ちでした。なので、その当時は、色々なことを始めてみるものの、全てが広く浅くになってしまって、深めていくことが苦手意識を感じていたんです。それがコンプレックスで、プロフェッショナルになれないから複業とかはできないかなって思っていました。

ただ、色々やっている中で自分みたいに広く浅くくらいのレベルを、まずきっかけとして求めている人もいるんだなということを知り、『本当に一歩目を踏み出そうとしている人たちのきっかけを支援する』ことをコンセプトとして、ハグルマとしてスタートを切ることとなりました。

今では、『なんとなくやってみる』ということに対して以前にもまして抵抗がなくなっています。最近でいうと、数年前の自分だったら全然想像もできないような、服のブランドのアンバサダー的なこともやらせていただいたんですが、そのご縁からECサイトでの販売も始めたりもしています」

―――他に何かやりたいことはあったりされますか?

「今年からは、教育業界に対する仕掛けをもっとやっていきたいなと思っています。自分の子どもが学校に通い始めたので、学校の環境がよく見えてきたと言うのがきっかけです。課題感としては、子どもたちにとってもっといい教育環境を整えたいという前に、まずは子どもたちに教える教員のみなさんがもっといきいきする環境を整える必要があるなと思っています。先生たちが学ぶことの楽しさを思い出してもらいたいですね」

―――フローレンスの事業もまさにご自身がサービスの受け手で、教育もお子さんと関連のあることを考えられているんですね。

「自分のポリシーとしては、ずっと当事者で在りたいんです。当事者というのは、自分だけではなく、家族も含めて。当事者だからこそ真剣に考えられて、それが解決できたら自分や家族にも影響があって、『家族と笑顔でいられる』というところにもつながります。なので、子どもが育っていくと、当事者になる対象は変わっていくので、保育園から次は教育、十数年経ったら社会と、それぞれに存在する課題解決をライフワークや本業などで貢献していきたいなと思っていますね」

文・撮影:とやまゆか